【自治体によっては必須】計画相談のメリット、デメリット

行政窓口で「ヘルパーを利用したいなら、計画相談に計画(プラン)作ってもらって」と言われた・・・。何それ?
計画相談とは何らかの障害を抱えて生活している方が、指定特定相談支援事業所と契約し、相談支援専門員に障害福祉サービスを利用するための計画を作成してもらい、定期的にモニタリングといって状況確認をしてもらえるサービスです。また生活のさまざまな悩みごとや困りごとを相談できるサービスでもあります。
相談支援専門員から自身の状況をアセスメントしてもらい、将来の目標や今の困りごとを解決するための「サービス等利用計画案」を作成してもらうことができます。
「サービス等利用計画案」とは国が整備する障害福祉サービスを利用するさいに必要なプランになります。障害福祉サービス申請のさいに申請書とは別に提出が求められます。「セルフプラン」として自分でつくることも自治体によっては可能ですが、「原則、計画相談支援事業所に計画(プラン)を作ってもらってください」としている自治体もあります。
多くの方はヘルパーや就労支援サービス、通所サービスなどの利用がしたくて行政にサービス申請をしていると思うので、「その前に計画相談と契約して計画を作ってもらえ」って面倒に感じると思います。
「行政に言われたから」「計画(プラン)がないとサービスが使えないから」と仕方なく利用しており、正直何をしてもらえるのか、利用することにどんなメリット、デメリットがあるのかわからないまま契約し、利用している方も多いのが実態と思います。
以下の記事では、計画相談とはどんなサービスなのか? そのメリット、デメリットを解説し、読者の方が計画相談を使いこなすコツをお伝えします。
計画相談の2つのサービス 計画・モニタリングと基本相談
計画相談は大きく分けて2つのサービスを利用者に提供します。
ひとつは計画・モニタリングサービス。もうひとつは基本相談サービスです。
計画・モニタリングは、その人にあった計画を作成し、それに基づいて利用者がサービスを利用するなかで、計画通りに困りごとの解決ができているか、計画に見直しが必要でないかを利用者やサービス提供事業所に定期的に状況確認をするサービスです。
障害福祉サービスを利用するためには行政が発行する「障害福祉サービス受給者証」が必要ですが、その発行のさいに必要となるのが「サービス等利用計画案」となります。サービスを利用したい方はこれがないと始まりません。計画相談による計画作成を必須としている自治体も多く、そうした場合は必ず計画相談に計画を依頼することになります。
逆に障害福祉サービスを利用する予定はないけど、その他のことでいろいろ相談したいという方は計画相談を利用できません。そういった方向けの相談窓口は別に用意されていますので、各自治体の案内を確認してみてください。
次に基本相談について説明します。
基本相談は計画作成やモニタリング以外のさまざまな相談に応じる業務です。ヘルパー事業所や通所事業所を一緒に探してくれたり、日常生活のさまざまな相談、悩み事の話を聞き、どうすればいいか一緒に考えてくれます。
さきほど「障害福祉サービスを使わない方の相談窓口は別にある」と述べましたが、計画相談を利用されている方は計画相談に相談することができます。
計画相談の費用は無料
サービス等利用計画の作成に必要となる計画相談ですが、利用は無料の制度となっています。なので利用者は費用を気にせず利用できます。
計画相談を実施したことによる事業者への報酬は国や地方自治体が支払っています。
ただし「遠くの施設への見学に同行してほしい」など利用者の依頼で交通費など実費が発生する場合は、その費用が請求される可能性があります。契約のときにそうした条件を確認しておきましょう。
これまでをまとめると、
- 障害福祉サービス受給者証を発行する根拠となるサービス等利用計画案を作成することができます。
- サービスが計画通りに利用できているか、それにより利用者の望む生活が実現できているかを定期的にモニタリングしてくれます。
- 計画作成、モニタリング以外にも、さまざまな生活の困りごとを相談できます。
以上が、原則無料で提供されるのが計画相談です。
次に、計画相談を利用するメリットを解説します。
計画相談を利用するメリット
計画相談を利用するメリットを4つにわけて解説します。
- ①長期的な目線で計画を立ててくれる
- ②長期にわたり継続して切れ目なく対応できる
- ③障害福祉サービスの代行申請をしてもらえる
- ④一人では難しいことも手伝ってくれる
①長期的な目線で計画を立ててくれる
計画相談を利用することで長期的な目線で日々の困り事や人生の計画を考えることができます。
人は目の前の困難や悩みに意識が向き、それさえ解決すればと短期的な目線になってしまいがちです。日常生活に困難を抱えやすい障害を抱えた方であればなおさらその傾向が強くなります。たとえば「ずっと掃除ができておらず家が汚くなっている。ヘルパーに来てもらって大掃除してもらおう」といったような状況です。
たしかに、いちど大掃除は必要かもしれませんが、困ったときに掃除してもらえたらそれでOKで済ませてしまうと、困ったことは繰り返されます。短期的には困り事が解決しても、長期的には解決していません。同じことを繰り返さないために、こまめに掃除する習慣を作ったり、ゴミが増えにくい、汚れがたまりにくい環境に整備したりと長期的な目線で解決する視点が必要です。
自分一人でそうした視点に立つことは難しくとも、計画相談がそうした視点を促してくれます。
②長期にわたり継続して切れ目なく対応できる
計画相談は障害を抱えている方であれば子どもから高齢者の方まで幅広く対応することができます。
65歳以上で介護保険制度を利用する場合はケアマネジャーに移行することにはなりますが、それまではずっと同じ計画相談を利用することが可能です。
子どもの場合、18歳で成人を向かえた場合に学校や放課後等デイサービス、医療機関などこれまで関わってくれていた機関がどれも関係を終了するイベントが生じることがあります。そうした中でも計画相談は継続してサービスを提供することが可能です。計画相談は利用者のこれまでのアセスメントの履歴、サービスの利用状況などを記録として保管しているので、成人後に新しく利用するサービスや関係機関に情報を引き継いでくれます。これまでの関係機関とこれからの関係機関をつなぐ役割を担います。
これから大人の世界に踏み出すのに、これまで支えてくれた人たちがいなくなることの不安は大きいと思います。計画相談を利用することでそうした心配はなくなります。
(なかには児童専門の計画相談支援事業所もありますので、その場合は成人に対応できる計画相談への移行が必要になります)
③障害福祉サービスの代行申請をしてもらえる
計画相談員であれば、障害福祉サービスの代行申請が可能です。
本来であれば、利用者がサービス利用開始までに役所の窓口に行きサービスの申請書と計画を提出するか、インターネットで電子申請する必要がありますが、計画相談はこれを代行することができます。
どんなことも自分でできるに越したことはないですが、日々の生活でハンディがあるなかで定期的にこうした申請を行うことが負担であれば、ぜひ相談してみてください。いつか自分でもできるように申請書の書き方を教わったり、一緒に窓口に同行してもらえることもできます。
④一人では難しいことも手伝ってくれる
③「障害福祉サービスの代行申請をしてもらえる」とも重なりますが、一人ではどうしても難しいことは相談しましょう。直接手伝ってもらえる可能性もありますし、困難を解決する専門家につないでくれたり、一緒に相談してもらえたりできます。
たとえば引っ越しをしたいと思ったときに、やらないといけないことがたくさん浮かびます。家を探す、荷物をまとめる、退去手続きをする、引越し業者を探すなどなど。どれも経験が少なくてどうしたらいいかわからないことも多いと思います。計画相談がこれらすべてを代行することは当然できませんが、何から手を付けたらいいのかを相談したり、直接サポートしてくれる業者を一緒に探したりすることはできます。どうしたらいいかわからないことは、まずは相談してみてください。
ここまで計画相談のメリットを4つ解説しました。
では、計画相談にデメリットはないのでしょうか?
次はデメリットについて解説します。
計画相談を利用することのデメリット
ここからは計画相談を利用することのデメリット4つを解説します。
- 定期的に自宅への訪問や事業者を含めた会議が必要
- 計画相談に間に入ってもらうより事業所と直接やり取りしたほうが早いこともある
- 相談員によって質の差が激しい
- 事業所の選択肢が少ない
①定期的に自宅への訪問や事業者を含めた会議が必要
計画をスタートしてから定期的にモニタリングが実施されます。利用者や家族に状況の聞き取りや感想を確認することもモニタリング作業の一つで、原則、自宅に訪問することになっています。
生活の状況を具体的にみてもらう良い機会ですが、「人と会うことが苦手で、ましてや自分の家に入ってほしくはない」と、毎回の訪問を負担に感じる利用者もいると思います。
モニタリングは3ヶ月か6ヶ月に1回の頻度が一般的で、「一人暮らしを始めたばかり」とか、「グループホームで生活を始めた」など、生活の変化が大きい時期などは3ヶ月間は毎月モニタリングになることもあります。モニタリング頻度はサービス等利用計画で定められ、受給者証にも記載されるので、行政への相談なしに勝手に飛ばしたり、延期することはできません。
計画相談を利用する以上は訪問を受け入れる必要があります。どうしても今は訪問を受け入れられない場合は、その事情を計画相談に説明しましょう。計画相談員が行政に延期等の相談を行ってくれます。また相談によっては自宅ではなく近所の喫茶店などで聞き取りもOKなこともあります。なぜ家では難しいのか事情の説明は必要ですが、どうしても難しいときは相談しましょう。
また、計画を新たに作ったり、更新したりした際は、実際にサービスを提供する事業所の人たちも集まって、今後の支援について協議するサービス担当者会議を実施する必要があります。こちらも利用者本人の参加が原則であり、年1回または3年に1回の更新の際には会議が行われます。
会議という形式に慣れていない利用者にとっては、緊張して負担に感じることもあります。相談員に何を話したらよいかなど事前に打ち合わせをしておくと良いでしょう。
計画相談として、利用者の困りごとに対応し、関係機関との顔の見える関係を築くうえで、定期的な訪問や会議は必要不可欠となってきます。どうしてもそれがしんどい、わずらわしいということであれば、計画相談は依頼せずセルフプランで申請することもできます。セルフプラン作成の相談ができる機関も自治体ごとに用意されています。計画相談を必須とする自治体でなければ、そうした選択肢もとることができます。
②計画相談に間に入ってもらうより、事業所と直接やり取りしたほうが早いこともある
計画相談が入ると事業所探しや空き状況の確認、細かい日程調整など、面倒な作業も計画相談に任せることができますが、なかには自分で直接してしまうほうが早いことも多いです。本来なら直接たずねておしまいのところを、計画相談に代行を依頼して、結果の返事を待つことになるので、当然のことではあります。また間に入ることで、伝言ゲームのような状況になり、伝達ミスや伝え忘れのリスクも高まります。あくまで一人だけでは難しいことを分担してもらう、自分でできることは自分でなど方針を決めてお願いすると計画相談の使い勝手があがります。事前にどこまでをお願いするのか、どれは自分がやるのか役割分担を計画相談と相談し、定期的に見直しましょう。
③相談員によって質の差が激しい
どんなサービスも、提供するのは一人の人間なので、どうしても人によってサービスの質に差があります。なかでも計画相談はその差が激しいサービスになります。
理由は相談内容が多岐にわたり、ケースバイケースの多い業務だからです。
現行の制度では障害は身体障害、知的障害、精神障害、難病の4つに分類されます。さらにそれぞれに疾患による分類があります。複数の疾患を抱えている場合もあります。同じ障害でもその特性や困りごとは人それぞれですし、各ライフステージで発生する課題も異なります。
対象の年齢層も幅広く、極端な話、0歳から65歳を超えた高齢者まで利用する可能性があります。当然、相談内容も幅広く、身の回りのサポートや通いの場を探したいといったことから、進学や就職の相談、年金や生活保護などお金に関する相談や将来の住まいの相談などさまざまです。
相談員ひとりひとりがこうした相談内容すべてに精通していることも少なく、得意分野であれば迅速に対応できるけど、慣れない分野であれば対応に時間を要すうえにそれほど的確でもないといったこともありえます。
相談員によっては自分が対応できる範囲はここまでと制限をかけている場合もあります。事前に何が得意で、何が不得意な分野か契約前に確認しておくと良いでしょう。
もちろん不得意だからやらないということではないです。その場合も一緒に考えたり、得意な人や専門業者につないでくれたりしてくれます。ただ専門業者のコネクションがあるかどうかも、事業所や相談員次第です。
④事業所の選択肢が少ない
どんなことでも相談、対応してくれる事業所を選びたいところですが、相談支援専門員の数は全国的に足りておらず、計画相談支援事業所も利用者に対して数が不足しているのが現状です。
役所の窓口で計画相談支援事業所のリストを渡され、上から順番に電話をかけていったが、ひとつも引き受け先がなかったなんてこともあります。あるいはなんとか見つかった事業所も多くの利用者を抱えており、対応できるのは計画作成だけでモニタリングはなしなんてこともありえるのが現状です。
人口の多い都市部ほど計画相談が足りておらず、計画相談のつかないセルフプラン率が高い傾向にあります。障害福祉サービスを利用する障害者の半数以上がセルフプランの自治体もあります。逆に地方は100%計画相談としている自治体も多く、必ず計画相談がつく仕組みになっている場合もありますが、計画相談が足りているわけではないので、モニタリングはなかったりします。年に1度計画相談から電話だけがかかってきて、「変わりはないか?」と聞かれ、なければ同じ計画案が送られてくるといった簡素なやり方もあります。適切ではないですが、そうでないと回らない事業所も少なくないのです。
自分にあった事業所をみつけることはまだまだ極めて難しく、どちらかというと縁あって巡りあった事業所、相談員と相談を重ねていくなかで、自分にあった事業所にしていくことが現実的になります。
計画相談メリット・デメリットまとめ
以上、計画相談を利用するメリット、デメリットをそれぞれ4つ解説してきました。
これまでの記事をまとめると、計画相談には以下のようなメリットがありました。
- 計画相談を利用すれば、長期的な目線で人生や生活のプランを作成でき、定期的に進捗をモニタリングしてもらえます。
- 一人では難しいことも、まずは相談でき、新しい専門機関に繋いでもらったり、連絡調整の代行もしてくれます。
一方で、デメリットとして
- 定期的な訪問や会議が負担に感じる可能性がある
- 直接自分で動いたほうが早い可能性がある
- 相談員によって質に差があり、事業所の選択肢も少ない
といったことが考えられました。
これから計画相談を利用する際には
デメリットを認識してその影響を小さくする工夫をしながら、メリットを活かしていくことをおすすめします。
そのためにしっかりと利用目的を明確にし、すべてお任せスタイルではなく、自分がやりたいことや、やってほしいことを相談員にはっきり伝えましょう。もし、それ自体がわからないんだということであれば、その点も含めて相談し、一緒に考えてもらいましょう。
相談員があなたの人生のよき伴走者になれることを祈っています。